第七話 芽生えた気持ち 










「任務を任せてみたい?」

無限書庫室の椅子に腰を落ち着けているユーノは、目の前にいる人物の言葉をそのまま口にした。

「そうだ。もうそろそろ頃合だろう」

ユーノと相対している人物は──クロノ。
時空管理局執務官であるクロノはこれからの進路、つまるところ八神はやてのこれからについて相談をしに来ていた。
ユーノに相談を持ちかけた理由は、はやてが戦力になるように指導をしているのがユーノだからである。
今現在のはやての実力を知るユーノに、この相談をするのが一番適切なのだろう。
レポートを読めば多少なりとも推測は出来るが、やはり直に教えている人間の意見の方が貴重だという考えがクロノにあった。

「ユーノがはやてを指導して、だいたい半年と少し。エイミィももうすぐはやて用のデバイスが完成すると言ってる。……いくつもの失敗を乗り越えてね。あとは本人次第で実戦投入できるはずなんだ」

「うーん……」

クロノの言葉に、ユーノは少しだけ戸惑った。
確かに今のはやてなら卒なく言われた課題をこなして、ある程度満足できるレベルにはなっている。
しかし、これはあくまで訓練なのだ。それも基本的な魔力操作の訓練。

魔法を使用する場合は魔力操作が出来ていれば大概の問題は片付く。
魔力のカタチによって様々な魔法が使えるから。
しかし、ユーノにとって実際の戦闘になった場合が問題だった。
訓練ではちょっとしたミスでも、そんなに大事にはならない。そうならないように少しずつ半年以上もやってきたから。
しかし、一つの選択を誤って気付いた時には失敗してしまったでは遅いのだ。
今彼女の能力、資質など総合的にみて実戦に投入しても問題がないか、それを判断するユーノにとっては本当に慎重に考えるべき問題だった。

「まだ無理そうか?」

答えを渋るユーノに、クロノが不安そうに問う。

管理局には人手が足りないのも事実。
何よりはやてが早く様々な世界へ赴いて、たくさんの人の力になりたいと思っているのも確かだった。

だからこそユーノは悩む。何かがあったら遅いのだ。
その為の引き金をはやては持っている。
いや、はやてだけではない。
なのはにも、フェイトにもある危険な不安因子。漠然とだが、その確信がある。

「いや、……大丈夫だと思う。けど……」

「けど?」

ユーノはその後に言葉を続けられない。
その不安因子については、ユーノにもこれだ、という確信を持って言える事が出来ないのだから。
ただ、なんとなく危ないと思っている。それだけではなんの説得力もない。
任務なのだから、危険なのは当たり前だ。
なのはやフェイトがよくて、はやてがダメ。なんて言われは通用するはずもない。
だからユーノは妥協するしかない。

「いや、本人に聞いてみるよ。どうしたいのか。元々はやての事だしね」

本人に聞いてみる、それが指導者としての結論だった。
ユーノはそれが最良だろうと言わんばかりに頷く。

「君の方も色々と大変だろうがはやても貴重な戦力になるんだ。年明けには彼女を正式に特別捜査官として迎え入れようと思っている。だからとまでは言わないが、よろしく頼む」

「分かってる」

「それじゃ、僕はこれで失礼するよ。次の事件の調査をしなくてはならないからね」

「うん。頼まれた資料はいつでも見られるようにしておくから」

「ありがたい」

クロノはそう言って立ち上がると、振り返えることなく無限書庫を出て行った。

「……実戦か……」

ユーノはクロノが出て行った扉を見て一つ息をつき、自分で言った言葉を反芻する。
いつかは来ると分かっていた事だが、ユーノにとっては少し頭を悩ませる事態だった。

『本人に聞いてみる』

そんな事、聞かなくても分かりきっている。
はやてはすぐにでも外へ出たいと言うだろう。
はやての能力を考えれば、問題なくこなせるレベルになってきている。
それはさっき考えた通りだ。そういう訓練をしているのだから。
彼女のひたむきな感情と、それに連なる努力。
今までやってきた事は無駄にはならない。そう言い切る事は出来る。

でも──という考えがユーノの中にあった。
完全に言葉では表す事が出来ないあやふやな感情。
掴もうとしても掴めない、そんなジレンマ。

しかし、どうしたいか? という疑問には簡単に答えが出せる。


『はやてを危険な場所に行かせたくない』


ただ、この感情の出所がいまいち分からない。
心配なのは確かなのだ。
……仲間なのだから。
しかしそれとは別の何かがユーノの中で燻っている。

時計を見ると訓練の時間になろうとしていた。


──行かないと。


ユーノは靄がかった考えを振り切るように立ち上がり、部屋を後にした。










     ◇     ◇





「これで最期だよ!」

「はいっ」

遠くにいるユーノが指し示す方へとはやては体を向け、同時に杖を頭上高くかざした。
白い帽子をかぶり、オリジナルの騎士甲冑に身を包み、空に浮かぶはやて。
足元に広がる魔法陣から眩しいほどの光が溢れ出して、はやての杖の先に集まる。

「いっけぇー!」

はやてが杖を振り下ろすと同時に、白い魔力の渦がユーノが作り出した緑色の球体へと突っ込んだ。
大規模な白い魔力の奔流に、ユーノの放った魔力の弾体は飲み込まれ、そして音もなく消滅した。

「はぁっ、はぁっ」

「うん。それじゃ、今日はここまでにしようか」

「ありがとう、ございましたー!」

息絶え絶えになのにも関わらず、はっきりとしたはやての元気の良い声が、青空が広がる空間に響いた。


以前シグナムから聞いていた、フェイトと戦闘をしている場所。
最近の訓練ではこの場所をよく利用しているのだった。
理由ははやての魔力を放出する訓練をするようになったから。
そしてそれだけではなく、はやて用のデバイスの実験もしていたのだ。

はやては草原の地に降り立つと、疲れたと言わんばかりにその場に座りこんだ。

「お疲れさまー! どう? デバイスの調子は?」

エイミィはすぐさまはやてへと駆け寄り、労いの言葉と共にデバイスの調子を尋ねてくる。

「ありがとうございますー! ええ感じですよ。今回も壊さないですみましたし」

はやては手に持っている杖を掲げながら、笑顔で答えた。

「うんうん、嬉しいねー! そしたら今回のデータをフィードバックして、もう少しレスポンスを早くして……うん、もう完成に近いね!」

「ほんまですか!?」

「うん! 楽しみにしててね! あ、そうそう。あっちの方もだいぶ揃ってきたから、来年の頭には実験的に始められるはずよ」

「何から何までほんま、面倒おかけします」

頭を下げるはやて。

「いいのいいの。好きでやってる事だしね」

エイミィははやてから杖を受け取ると、気分良さそうに訓練場から出ていった。


はやてはその後姿を笑顔で見届け、ユーノの方へと振り向く。
ユーノは手元に浮かび上がる電子キーボードを叩いていた。
おそらくいつものように今日の訓練についてのレポートをまとめているのだろう。
少し声をかけるのを躊躇ったが、ほんの少しだけ気になった事があったので黙々とキーを打つユーノの後姿に声をかけた。

「なぁーユーノ君」

「ん? なにかな?」

ユーノは振り向いてはやての呼びかけに応える。

「今日の訓練メニューなんやけど、ちょっとだけハードやなかったか?」

「そうかな? でも、はやてなら出来ると踏んで組んだメニューだから」

「んーそうなんかな?」

訓練で少し疲れたのだろうか、間延びした声で答える。
そして、ユーノの言葉を鵜呑みにしたはやては後ろに倒れこんだ。
その姿にユーノは微笑して、再びキーを叩き始める。


時が緩やかに流れるこの瞬間が、はやては少し気に入っていた。




やがてレポートを書き終えたユーノは、手を止めてはやてへと振り返った。
いつの間にかバリアジャケットは解かれていて、普段の格好のままはやては寝そべっている。

「はやて。一つ、聞きたい事があるんだけどいいかな?」

「うん? なに?」

寝そべっている格好からなんとか体を起こし、ユーノの顔を見る。

「はやては今すぐにでも実戦……つまり現地に行って色々な人を助けたいと思ってる?」

訓練前にクロノに言った、はやての気持ちを確かめるという事。
ユーノの真面目な雰囲気を感じ取ったはやては姿勢を正し、そして──、

「思っとるよ」

先ほどの間の抜けたようなものではなくハッキリとした声でそう答えた。
ユーノの視線から目を逸らすことなく。
はやての意思に呼応するようにチャリ、と十字の首飾りが揺れた。

「そうか。うん、そうだよね」

ユーノは、はやての答えに少しだけ表情を硬くしつつも俯いた。

「ユーノ君?」

何があったのだろう? そう思いつつ、はやてはユーノに声をかける。

「いや、なんでもない。それより今月の最後の休日にテストをしようと思うんだ。いわゆる卒業試験だね」

「えっ?」

「今までやってきた事の総復習と思ってくれればいい。今のはやてなら難しくないさ」

「う、うん……」

そう言って、ユーノは笑った。
いきなりすぎる、どうも不自然な笑顔。

しかし、はやてはその笑顔に対して、うろたえながらも黙って頷くしかなかった。










     ◇     ◇









「準備はいいかな?」

「はいっ!」

澄んだ青空が広がる空間の中、はやての卒業試験が行われる。
訓練で何度か使用していた訓練場だが、今回は勝手が違うように思える。
それもそのはず──。

「はやてちゃーん! 頑張ってー!!」

なのはやフェイトを始め、入り口近くの場所には様々な面々が揃っていた。
ヴォルケンリッターやクロノ、エイミィとその補佐らしき人。リンディ提督とその同僚らしき女の人。
様々な人達が応援に駆けつけ見守る中、はやての最終試験が行われるのだ。

「なんや、落ち着かんなー」

エイミィから渡された杖型デバイスを見つつ、はやては照れたように笑う。

「そうだろうね」

ユーノもつられる様に苦笑をする。

これが終わればはやてとの時間もなくなる──。

そう考えるとまた、心の奥が疼く。

「でも、すぐに気にならなくなるよ」

ユーノはすぐに頬の筋肉を引き締めた。
まるで自分に言い聞かせるように、力強く。


「それじゃ、始めようか」


──そう、これも全部、はやての為なのだから。













     ◇     ◇














昼時には少し遅い、けれど食堂には人がまばらにいる、そんな時間。
はやての卒業試験を終えたユーノは、クロノと共に食堂へと来ていた。
カウンターで昼食を受け取り、クロノが向かう席へとついて行く。

端の方の一角で足を止めたクロノは、黙って椅子を引いて座った。
それに倣い、ユーノも向かいの席に座る。

「昼ご飯はそんなものでいいのか?」

「まぁね」

ユーノはクロノの言葉に軽く答えた。
そんな事よりも先に聞きたい事があったから。

「それで、結果はどうだったんだ?」

先ほどのはやての顔を忘れられないユーノは、クロノに単刀直入に話を切り出す事にする。
クロノは一口、皿に乗っていたサラダを口に運んで飲み込むと、口を開いた。

「うん、とりあえずは合格かな」

「えっ?」

ユーノはクロノの言葉に驚きの声をあげる。

「分かっている。どうして『移動しながらも放出魔法が使えなかった』のにって事だろう?」

「あ、あぁ……」

ユーノは戸惑いながらも、クロノの言葉に頷く。


試験が終わった時、誰もがはやての短所を理解したのだ。
致命的になりかねないその出来事。
それは……はやては魔力を放つときは、必ずその足を止めてから砲撃をしている事だった。

これは癖というわけではなく、周りに注意を払いながらも魔力を放出する集中が出来ないということ。
空で制止してから撃つことは出来る。
しかし、移動しながら魔力を操作することができないのだ。
これは訓練の時には全く気付かなかった事だった。

「魔力の操作的なものは元々の才能があったのだろう。驚くほどに上達してたよ。でも、どうもまだ出力制御が苦手らしいね」

今回の試験で、狙った的に当てるテストでは十回中九回の成功。
動いている標的を落とすテストでは十回中七回の成功。

それまではよかった。
唯一つ、突然クロノが提案した『攻撃を回避しつつも、目標を沈黙させる』テスト。
これは五回中二回成功という結果に終わった。

試験後、落ち込んでいるはずなのに、しょうがない、と言って笑っているはやてがとても印象的だった。

「……デバイスを破壊しない程には制御できるようになったけど、やっぱり大量の魔力放出時の微調整とか精密な操作に関しては難しいんだと思う」

「だから移動中になると魔力操作が散漫になってしまうと」

「そうだと考えてるよ。はやては体内にある魔力の操作は得意で、一度外に出してしまった魔力に関しては制御がうまくできないんじゃないかな」

「おそらくそれはベルカの特徴だろうな。物理的に繋がっていればものであれば扱えるが、遠隔操作をしたりするのは苦手なのかもしれない」

つまり、デバイスを通して大量魔力を扱うという事がマスターできていなかったのだ。
これはクロノの言う通り、魔法体系の違いから来る問題なのかもしれないが、事前に見抜ける筈の問題だった。
それが卒業試験という舞台で発覚してしまっては……卒業の見込みが薄くなってしまう。
それ以前に、そのような状態で戦場に出ては仲間を危険に晒す方が可能性的に大きい。

「ごめん」

力になると言いながらも、結局ははやての事を満足に理解していなくて、ちゃんと育て上げられなかった事を後悔する。
訓練と称してやってきた事でも基礎的な魔力の操作や戦略、心構えだけ。
だが、その考えはミッドチルダ式の魔法での考え方。
ベルカ式の戦略や心構えなんて物は元々ユーノでは分からない。
仮に知識として教えても、実際に経験しないものを教えるのは無責任極まりないのだ。

「何で謝るんだ?」

「僕がちゃんと教えきれてなかったから……。これじゃ足を引っ張るだけに──」

「言っただろ? 合格だって。使いようはいくらでもあるんだ。常時その場に止まるわけでもないけど、あの巨大な魔力砲なら体勢が整ってから撃てば決めの一手になりうるしね。それに君ならこれくらいはすぐに考え付くと思ったんだが……」

ユーノはクロノの言葉に声が出せなかった。
確かにそうだ。
はやてのような人材がいるなら、それを利用して有利にする戦略なんていくらでも考えられるはず。
なのは達の才能を見て、サポートに回ろうと思ったユーノは少しでも力になれれば……、そういう考えで戦略の勉強もしてきたのだ。
なのになぜ……。彼女達の才能に中てられたのか? 
そんな事を考えながら、ユーノは自分の中にある微かな違和感に目を背きつつもクロノに答えた。

「そんな、買い被りすぎだよ」

「そうか……? まぁいい。なんにせよ、彼女には指揮官適性もある事は分かっているしね。後方で指揮を執りながら実戦勉強なら安全だろう」

「クロノがそういうなら大丈夫なんだろうな」

「もちろんだ。僕もついているしね」

「大した自信だな」

ユーノはそう言って笑った。

「そういえば彼女は?」

「病院へリハビリに行ってるよ」

「そうか……。あぁ、そうだ。この前の質問なんだが、彼女の答えはどうだった?」

「……すぐにでも困っている人を助けたいって」

「あまり嬉しそうじゃないな?」

「それはまぁ、不安定な大切な教え子が戦地に赴くなら多少は心配になると思うけど……」

「本当にそれだけか?」

クロノは優越の浸った笑みでユーノを見つめる。
試されてるような、自分の気持ちを覗き見するような、そんなクロノの視線。

「……それだけだよ」

そんなクロノの目から逃れるように、視線を自分の昼食へと向けて答えるユーノ。
その様子にクロノは少しだけ、さらに口元を緩めるのだった。

「とりあえず覚えておかないとけないのは、はやてはベルカ式の騎士だがシグナムやヴィータの様な近接戦闘型や対人特化型ではなく、シャマルの様な支援型ということだな」

「そして、なのはのように色々な距離での砲撃や集束砲は打てないけど、魔力量に物を言わせた強力な長距離砲もある」

「あぁ。おそらくあの時に撃った集束砲はリインフォースの助けがあって出来た事なんだろうな」

ユーノは闇の書の防御プログラムの機能を落とすために放った一撃と、それに連なる出来事を思い出した。

あの時、はやてが放った『ラグナロク』は、直射型の砲撃魔法。
足元に出ていた魔方陣はミッドチルダ式のものであり、発射シークエンスにベルカの魔法陣を使用したものだった。
ベルカ式というのは基本、対人特化型の術式。
そうなると、ベルカ式の正当な継承者であるはやてがミッドの魔法を撃った事になる。

これははやてのデバイスを作る際、幾度も取り上げられた話題だった。
そしてクロノやエイミィ達が出した結論により、改良に改良を重ねて作成したベルカとミッド、両方の魔法体系を扱えるデバイスを完成させた。
ただし、なのはやフェイトのようなインテリジェントデバイスではなく、アームドデバイス。
インテリジェントデバイスは繊細なもので、ベルカとミッドの両方に対応出来ない事が最初に分かった事から、アームドデバイスに変えられたのだ。
しかし、これはただの魔力増幅機であると共に、発射口の機能しか有していない。
はやてが生み出した魔法を増幅するまではいいが、その増幅した『魔力』を制御する管制デバイスが追いついていないのだ。
それを補うのははやて自身。

さもなくば────。

とにかく、はやての魔力量は桁違いだ。
今は無き夜天の恩恵からか、総魔力量はなのはより高い。
その分、影響を与える範囲は広くなるのは必然だ。
そして、その魔力を制御下に置く事も容易ではない。
はやてにかかる負担やこの先の不安は、頭で考える限りでも簡単には拭えるものではなかった。

「エイミィの作ったはやて専用のデバイスももう完成だろう。はやての願いはもうすぐ叶えられそうだよ」

「そう……だね」

ユーノは様々な不安を残しながらも、頷く。
いや、頷かなければならない。
不安要素なんて上げたらキリがないから。
ユーノ自身、その結論がなまじ出てしまうだけに、自分の無力さに嫌気がさす。

「礼を言うよ。ユーノ。これならもっと期待しても良さそうだ」

クロノはそう言うと、トレーを持って立ち上がる。
話している間にも食べていたのか、すでに食器の中身はなかった。

「あはは……お手柔らかに」

嫌味ではないだろうが、クロノの言葉にユーノは素直に答えられなかった。
クロノは先ほどとは意味の違う意地悪そうな笑みを浮かべると、トレーを片付けて食堂を出て行った。


クロノの後姿が見えなくなった事を確認して、ユーノは深くため息をつく。

「はぁ……」

これではやてとの訓練が終わる。
いや、終わってしまう。

それが少し寂しく、残念だなと感じる自分がいる事に気付いた。


──だめだめ、これはいい事なんだ。


自分にそう言い聞かせ、食事の続きに手をつける。

すっかり冷めてしまった昼食は、いつもより味気ない気がした。













     ◇     ◇











「お疲れ様、はやてちゃん!」

「はいっ、ありがとうございます。先生」

「いつもいつもありがとうございます、石田先生」


病院の一室にいるのははやてとシャマルと石田医師。
今この三人はいつものリハビリが終わり、ちょっとした世間話を始めるところだった。

実の所、これはメンタルケアも含んだリハビリでもある。
リハビリをする人に対しての不安や恐れを緩和し、そしてリハビリを続けられるように前向きにさせたり激励する事を含んだものだった。

「このままの調子で行けば、来年度は松葉杖で学校に通えるわね」

「ほんまですか!?」

「えぇ。はやてちゃんの頑張りの成果よ」

楽しそうに、そしてまるで自分の事のように石田医師ははやてに笑顔で話す。

「よかったですね。はやてちゃん」

シャマルも同じように喜んでおり、その場はまるで花が咲いたように明るい場所になった。
その後も、今は何が楽しい事なのか、一年後何がしたいか、などと世間話を二十分ほど続いた時の事。

今までの話を聞いて何か感じる事があったのか、石田医師が口を開いた。

「ところではやてちゃん、最近何かあった?」

「……え?」

突然の先生の言葉にはやては言葉を詰まらせた。
その顔からは動揺が見て取れる。
シャマルも顔を少しだけしかめたが、すぐにその表情を消す。
はやての様子に石田医師は顔を綻ばせ、優しく声をかけてきた。

「何年はやてちゃんの事見てきたと思ってるの? 何か辛い事でもあったの?」

「あ……えっと……あ、あはは」

少しだけはやては戸惑い、どうしたらいいか分からない、と言うように曖昧に笑った。

「そう……。話したくないなら無理にとは言わないわ。でも、これだけは覚えておいて?」

はやての顔を覗きこむように石田医師は少しだけ前かがみになった。
はやては顔を引き締めて静かに頷く。
すると、いきなり石田医師ははやての頭を両手で包み込んだ。

「私はあなたの事をずっと見てきた。あなたは誰よりも努力をしている。その努力は必ず、いつか報われるから。今はうまくいかなくて落ち込むかもしれない。ああすればよかったって後悔もするかもしれない。でも、最後まで諦めなければきっとうまくいくから。これははやてちゃんの経験談よ」

「石田せんせ…………はいっ。ありがとう、ございます」

諭すような石田医師の言葉に、はやては少しだけ胸の痞えが取れたような気がした。

「でも……」

石田医師は少しだけはやてを包む腕に力を入れる。

「何もかも一人で背負おうとしないで。何かあったら遠慮なく周りに相談しなさい? 私やシャマルさんだけじゃない。他の色々な人達に頼るのも立派な事よ?」

色々な人に頼る──その言葉に、はやてはハッとなった。

──これからもどんどん頼ってきていいよ。

そう言ってくれた人の顔が頭を過ぎった。

彼は今、何を考えているだろう。
今日の事を一番後悔しているのはユーノの方なのではないか?
責任感が人一倍強い彼は、今回のことは笑って過ごせる問題ではないのではないか?
自分が落ち込む前に、やる事はあるんじゃないか?

「…………はいっ」

はやては胸の奥に広がる熱いものを確かに感じ、石田医師の言葉に応えた。
はやての返事に満足したのか、石田医師は腕の力を緩め、はやてを開放する。

「うん、いい笑顔になったわね」

「ありがとうございます。……少し、やる事ができました」

「そう。それはよかったわ。何かあったら私に教えてね? それじゃ、今日はこれくらいにしましょうか」

「ありがとうございます!」

「ありがとうございました」

「はい、気をつけてね」

石田医師の笑顔に見送られ、二人は診察室を後にした。






「はやてちゃん、やる事ってなんですか?」

「んー? シャマルには内緒や」

「そうですか、残念です」

そう言いつつも、はやての笑顔にシャマルは心地よさそうに微笑んだ。








     ◇     ◇






その日の夜。

ユーノは自室で仕事のレポートをまとめていた。
調べた本の数はもちろんの事、次元別、時代別、書かれていた出来事に関しての整理など……。
昼以降、何かしていないと気が済まなかったユーノは無限書庫で仕事をしていたのだ。
仕事をしていれば少なくとも何も考えないでいられたから。
それに、無限書庫の扱いという大役を任された以上、やるからにはキチンとやっておきたかった。
任された以上は……いや、任される以上に。

「ふぅ」

ため息を吐くと共に、動かしていた手を止めた。
目の前のモニターをボーっと眺め見ていると、文字の羅列が混ざり合い、段々とミミズが踊っているように見えてくる。

これでは目も悪くなりそうだ。少し休もう。
窓の外へ視線を向けると、そこには暗幕が広がっていた。
その暗幕に飾り付けられたように光る星達。
視線が定まらない向こう側を見ていると、少しだけユーノの心にある痞えが疼き出す。
今日持ってしまった確かな後悔。
思い出すだけでも、自分自身を責めたくなる。

問題点を浮き彫りにする事は出来たはず。
それをなぜやらなかったのか。
時間がなかった?
そんな訳はない。睡眠時間を削ればいくらでも作れたはずだ。
単純に気付かなかった?
幾度も訓練前にイメージを固め、綿密に訓練計画を立てていたのに?

そんな自問自答を繰り返していると、モニターがセーフモードに入ったのか、画面が暗くなった。
ユーノはそれに気付き、考えを中断する。

このまま続きを書けるような気分じゃないな。

「少し気分転換をしてこようかな」

誰に聞かせるわけでもない一人ごとを呟いて、ユーノは部屋の扉を開けた。











少しだけ冷えた夜風がユーノの体を通り抜ける。
缶ジュースを片手に、ユーノはいつもの場所へと向かった。
本局前の広場にあるベンチ。
休日に必ず訪れる場所へと歩を進める。
そして広場に着いた時、そこには夜空を見上げている先客がいた。

「はやて……?」

「あ、ユーノ君」

「どうしてここに?」

「うん、ちょうお礼を言おうと思ってな。あ、こっちどうぞー」

体を少しずらして、開いた場所へとユーノを促す。
ユーノははやての好意を受け取り、隣へと腰をかけた。

「今まで、私のわがまま聞いてくれてほんまにありがとうな」

はやてはそう口にして、頭を下げた。

「いや、僕は大した事してないよ」

はやてに頼られる人になりたい、そう思ってはいたが、いざお礼の言葉を言われると、素直に受け取る事ができなかった。
無論、謙遜などといったものではない。
はやてを育て上げられなかった、その責任がユーノの考えを縛っていた。

「そんな事あらへんよ! 特訓の事だけやない。この前もユーノくんは相談に乗ってくれた」

「はやてが頑張ったからだよ。この前だって……はやては自分で答えを見つけた」

「そんな事あらへんよ! ユーノ君がおらんかったら私はどれも途中で諦めてたかもしれへん」

「そんな事……」

「ううん、きっと自分ひとりで抱え込んで落ち込んでた。答えを見つけるなんて到底できんかったって思う」

「はやては僕を持ち上げすぎだよ」

そう言って、ユーノは力なく笑う。
その笑顔を見て、はやては少しだけ悲しくなった。

「ううん、ユーノ君は頼りになる。それは私が良く知ってるよ」

はやてははっきりと断定した。
ユーノが自分のせいで落ち込んでる事はすぐに分かったから。
落ち込まないで欲しい──自分のせいでユーノを悩ませたくない。
それははやての心からの願いだった。

「今日な、病院で言われたんよ。『うまくいかなくて落ち込む事もあるかもしれない、もっとやっておけばよかったって後悔もするかもしれない。でも、諦めなければ最後はきっとうまくいく』って。一生懸命ユーノ君が教えてくれて、その結果はあまりよーなかったけど、でも……したい事が出来なくなったわけやあらへん。少し遅れただけや。だから諦めへんよ」

「…………」

「だから、今日の試験の結果、不合格になっても私は平気。後悔してへんから」

「それは……」

真っ直ぐなはやての言葉に、ユーノは言葉を返せなかった。
どうして? なぜそんな風に考えられるんだ。
そんな言葉を口にしようとする衝動を、必死に押し殺す。

「落ち込んでへんといえば嘘になるけど、大丈夫や。ユーノ君に教わった事は無駄じゃあらへんし、次はちゃんと合格してみせるよ」

曇りのない言葉。
真っ直ぐな視線。
そしてはやての屈託のない笑顔に、ユーノはとうとうため息をついた。

これじゃ、悩んでいた自分が馬鹿みたいじゃないか。
ユーノは手に持つ缶ジュースを呷ると、一気に中身を飲み下した。

少しだけ、心のもやが晴れた気がする。
悩んでても、後悔しても仕方がない。
はやてがそう考えるなら、自分も前に進まないと。

「ありがとう。はやて」

「ん? いきなりどないしたん?」

「いや、はやては凄いよ」

「えっ? 私は凄くなんかあらへんよー」

「ううん。前向きに物事が考えられて立派だと思う。僕も見習わないとね」

「ユーノ君のおかげやから……」

「え?」

「多分、ユーノ君がいなかったらこんな風に考えられんかったと思う」

「はやて……」

「だから──これからもよろしゅうね!」


そう言って、はやては笑顔で手を差し出してきた。


──ドクン。


太陽の様な、眩しくて、魅力的で、一度目にすれば視線を外せないようなそんな笑顔。
その笑顔を見て、ユーノは自分の鼓動が高鳴るのが分かった。


頭がふらふらする。

目がチカチカする。

波打つ血液が頭へ上り、耳が痛い。

口がカラカラと乾く。


それでも、不思議と気分は悪くなかった。
それどころか、このままでも良いとさえ思ってしまう。

「? どうしたん?」

はやての声で、ハッと我に返ったユーノは、慌てて口を開いた。

「え? あぁ。そうだ! 不合格だと思ってるみたいだけど、はやてはちゃんと今回の試験合格してるよ!」

「えっ!? ほんまか!?」

「うん! クロノがそう言ってた。だから安心して良いと思うよ」

「やったー!!」

ユーノの手を取って喜ぶはやて。
その様子からして、本当に不合格だと思っていたのだろう。
勢いよく腕を振り回すはやてに、握ったユーノの手も振り回される。

意外と小さいはやての手。
そこから伝わるはやての温もり。
それは、ユーノの心を振り回している。
そして、文字通りユーノは身も心も振り回される事になった。


一頻り腕を回して興奮が収まったのか、はやてはやっと腕を下ろした。
繋いだ手も離れ、ユーノの手のひらは冷たい空気に触れる。

「うん、今晩は気分良く寝れそうや」

満足気にはやてはそう言って、車椅子へ移動をしようと椅子に手を置く。

「あ、手伝うよ」

「ええって。そのまま座ってて」

はやては椅子に手をついて力を入れると、少しずつ腰を上げていく。
椅子の背もたれに捕まりながらも、はやては立つ事に成功した。

「すごいじゃないか!」

「えへへっ」

ユーノの感嘆の声に、はやてはブイサインを作って答える。
そしてはやてはゆっくりと右足を一歩動かしたが、そのまま車椅子へと倒れこんでしまう。

「危ない!」

ユーノはすぐさま立ち上がって、はやての体へと手を伸ばす。そして間一髪ではやての体を支えた。
右手ははやての手を持ち、左手ははやての腰へ。

そしてユーノの顔前にははやての顔が──。

「あ、あっと、ごめん!!」

慌てて顔を遠ざけて、しかしゆっくりとはやてを車椅子に下ろした。

「あは、ちょぉ失敗しちゃったかー。おおきにな、ユーノ君」

「ま、まったく……無茶は程ほどにしてね?」

ユーノが言った言葉に、はやては、

「それでも挑戦は続けるよ。今は失敗してもーたけど、必ずいつかは成功するから」

ユーノの目を見て、再び自分の決心を露わにした。
今回の件に重ねて言ったはやての言葉。
ユーノはすぐにはやての言葉の意図を理解した。

「…………うん。僕はもう、後ろ向きには落ち込まないようにするよ」

ユーノは頷いてユーノ自身が出した結論を口にする。

「うん。約束な」

そう言ってはやては小指を立てた右手を差し出す。

「これは?」

「地球、日本で言うところの指きりや。約束するための儀式なんよ」

「そうなんだ。どうすればいいの?」

「ユーノ君も指を出して」

「こう?」

「そうそう」

ユーノの小指に指を絡めたはやては、リズム良く歌いだした。

「指きりげんまん、嘘ついたら針千本のーます。指切った」

歌い終わってはやては小指を離す。

「これで終わり?」

「そう、約束したから破ったらあかんよ?」

「うん、分かったよ」

そして、ユーノは笑った。とても自然に。
ユーノの笑顔に満足したはやては、車椅子の方向を変えた。

「じゃぁ、私はもう戻るな」

「あ、送っていこうか?」

「大丈夫。ユーノ君の時間を邪魔しちゃったからな。ゆっくりしていってや。ほな、おやすみ」

「うん。おやすみ」

はやてはユーノの申し出を断って、宿舎の方へと戻って行く。
その後姿をユーノはただ、黙って見つめていた。


少しだけ火照っているユーノの頬を冷たい風がゆっくりと撫でていく。

左手に持っている空き缶が、やけに冷たく感じられた。








     ◇     ◇





「ただいまー、みんな」

「お帰りなさいませ。主はやて」

「はやてちゃん、おかえりなさい」

「おかえり! はやて!」

いつもと変わらない、様々な迎えの声にはやては頬を緩ませた。
しかし、いつもとは様子が変わっていたのか、シャマルがはやてに疑問を投げかけた。

「なにか良い事でもあったんですか?」

「秘密や」

「そうですか」

シャマルの疑問に笑顔で答えるはやて。
シャマルもその答えが分かっていたのか、笑顔で受け入れてそれ以上の追求はしなかった。

「えーなんだよー、教えろよーはやてー」

しかし、ヴィータだけは駄々をこねてはやての笑顔の意味を尋ねる。

「しゃーないなー。今日の卒業試験な…………なんと合格だったんよ!」

「おぉー! やったじゃん! はやて!」

「それは……おめでとうございます」

「良かったですね。はやてちゃん」

ザフィーラは声には出さないが、尻尾を振っていた。
きっと祝ってくれているのだろう。

「みんなありがとうな」

ささやかな祝福の中、はやては満面の笑みで答えた。

「ごめん、みんな。悪いけど今日は疲れたから、先に休ませてもらってええかな?」

「はい。ごゆっくりお休みください」

「今日は一日頑張りましたもんね。おやすみなさい、はやてちゃん」

「じゃーあたしも寝る!」

「ヴィータ。せめて汗を流してから休め」

「そうだった……」

はやての言葉に必ず答える三人。
そして、実は何気なく反応している一匹。ザフィーラも尻尾を上げては伏せている。

「うん、ほな、みんなおやすみな」

はやては全員の顔を見渡し、自室へと入って行った。
車椅子からベッドに体を移して、仰向けに寝そべる。

「ふぅ……」

はやては小さくため息をついた。
だが、はやては笑顔のまま。
石田医師と話してて気がついた、ユーノの重荷を取り払う事。
それに気がつき、ユーノと話をしてうまくいって良かった。
はやての頭の中ではそれで終わっていたはずだった。

なぜだろう、先ほどから高鳴る鼓動が未だに止まらない。

さっき倒れそうになった時に捕まれたユーノの手。
力強くて、優しくて──とても安心する事ができた。

そして、ユーノの顔を真正面で捉えた時。
死んでしまうんじゃないかというくらい、はやての心臓はうるさいほどに暴れ始めていた。

必死に冷静さを保とうとして何かを言ったと思うが、気が動転していてちょっと覚えていない。
でも、ユーノは前を見てくれると言ってくれた。
今回の事で悔やむ事をやめてくれた。
その為の指きりもした。

そっと胸の前で右手の小指を左手で包む。

とても大事そうに、とても愛しそうに。


「あ」


しかし、それは自分の無意識でやっている事に気付いた。

なんでだろう。

はやては疑問を持つ。


指きりがそんなに大事なのか。

なぜ右手の小指が愛しいのか。

なぜ心臓の鼓動が止まないのか。



そして、数分後。

はやての頭の中である結論が出ていた。





卒業試験を合格した事よりも、



リハビリがうまくいっている事よりも、



ユーノの笑顔を見れた事の方がずっと嬉しかったんじゃないかと────考えた。





でも、笑顔を見れたけれど……それをずっと直視する事は出来なかった。
いつからかユーノと視線が合わせると、緊張するようになってしまったから。
まるで自分の考えが全て筒抜けになってしまうような感じがして、なんだか落ち着かなくなる。

それでも、ユーノの笑顔が見たかった。


「もしかしてこれって──」


そう言いかけた時、扉が開いた。

「はやてー」

「うん? どないした? ヴィータ」

「あたしも一緒に寝るー」

「ほか。おいでヴィータ」

「あれ? はやては着替えないの?」

そこではやては自分がまだ普段着でいる事に気付いた。

「あ、せやな。着替えんとあかんな」

あはは、とカラ笑いをするはやて。

「変なはやてー」

ヴィータも笑い、布団へと潜り込んだ。
はやても着替えを済まし、ヴィータの隣へと移動する。

「今夜は良く眠れそう」

「そか、良かったなー」

「はやては?」

「んー私はどうやろ?」

「分かった。興奮して眠れないんだろ?」

ヴィータはニヤニヤしながらはやてを茶化した。

「ヴィーター? そないなこと言うのはこの口かー!?」

「あ、ひゃめひゃって! わひは……あはははは」

片手で口を引っ張り、もう片手で脇をくすぐるはやて。

「主はやて。もう夜更けです、静かにされた方がよろしいかと」

そんな事をしていると、すぐにシグナムに注意された。
扉の向こうにも相当響いていたらしい。

ヴィータとはやてはそろって「はーい」とシグナムに答えて、ベッドに横になった。

「おやすみ、はやて」

隣のヴィータが就寝の挨拶をしてきた。

「うん、おやすみな。ヴィータ」

そして数分立たないうちに、静かな寝息が聞こえ始めて来る。
そんなヴィータに可笑しさを感じつつも、はやての目はまだ冴えていた。



──今晩は気分良く寝れそうや。



先ほど自分で言った言葉が頭を過ぎった。



前言撤回。



気分はいいが、今夜はあまり眠れないかもしれない。





──これって────恋……なんかな?





その疑問にあっさり答えてくれる人はいないのだから。










     ◇     ◇






そして翌年の初め。




「八神はやて特別捜査官補佐。ただ今を持って貴官を特別捜査官に任命する。これからも世界の平和の為に従事せよ」

「はいっ!!」




はやては特別捜査官に昇格した。







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